「おーい、カトケンくん」
夏の暑さが落ち着いたと思った途端、急に寒さが増してきた9月のある日。本社のゴミ捨て場で再生紙と再生不可紙を分別していた僕は、携帯電話でなにやら話しながら歩いてきた係長に声をかけられた。
「この前言ってた特許取ったアレ、なんだっけ?」
「すみませんアレじゃ判らないんですけど」
「ファイヤーソニック工法じゃなくって」
「…まさかヒートソイル工法のことではないですよね?」
「おお、それそれ」
指をパチンと鳴らしながら、係長は電話の相手に伝える。
「ヒートソニック工法だって」
「いやヒートソイル工法ですってば…」
電話を切った係長は僕の作業を覗き込む。「何してんの?」
「ごみの分別してるんですよ!誰かさんがゴミ箱に適当にごみ捨てるから…」
「そりゃ困った奴がいるもんだなあ…ウチの会社は環境意識が高いことで有名なのに」
…困った奴とは、アンタのことだ。
「みんながちゃんと分別してくれりゃあ後々楽なのになあ…」
「おいおい、それ一般可燃じゃなくてプラゴミだぜ?」僕からゴミ箱を取り上げた係長は、意外にも手際よくゴミを分別していく。
「こっちはビニールで、これは産廃。宅配便の伝票は引っぺがして再生不可紙で、封筒は糊がついてるから一般可燃物」
「…係長、すげえ」
「ダテに家でゴミの分別を担当してるわけじゃないぜ」
ええっとそれって…突っ込んだほうが良いんでしょうか…?